ショウ・タイム 4


14:00 舞台裏2




「全員そろったようだな…時間厳守で大変よろしい。では予定通りに第二部会議を開催しよう
   じゃないか。」
「テンゾウ…いつもにも増して顔色悪いぞ。」
「ほっといて下さい。」
「さて、まずは全体の予測スケジュールについてだ。本日午後に北部地区の廃城…確か正式
   名称は忍冬(にんどう)城塞だったか…において、潜入調査をしてもらうことになっている。
   そして本日中に移動をして蓬莱山内の第81演習場の演習場管理棟にて宿泊。
   ちなみに、明日は演習場の調査と表向きは伝えてあるが、特にこの実験には関係はない。  
   まあ、今日雪山で宿泊させるための口実だ。」
「…もう体裁は気にしないんですね。」
「あくまでもメインは宿泊だということですか。」
「あたりまえじゃないか。」
「要するに、二人きりで廃墟散策と一つ屋根の下で宿泊ってコースですか。」
「その通り。さらに、夜のクライマックスまでに色々とうってつけのシチュエーションを用意して
   ある。まずは第一ポイントである廃城について説明をするからな。」
「あの、忍冬城って…あれですよね、山賊のアジトだったとか抜忍の拠点になっていたとか。」
「そうそう…あと、なんだか心霊スポットとして名高いらしいね。」
「ああ、夏になると他の国からも夜間にわざわざ見に来る人たちがいるとか…近隣村落から
   そんな報告が入ってましたね。」
「…心霊スポットか…いいね。想定外の付加価値だな。」
「テマリ君は、そういうのはあまり気にしないんじゃないんですかね。」
「むしろシカマルの奴のがびびってたりして。」
「それもアリだ。テマリは長女だからな…優しく誘導してやるかもしれん。」
「うわあ、男の沽券に関わるわー。」
「シカマルもあまり頓着しないですよ、そういう怖い系…。」
「可愛気ない二人だねえ。」
「まあ、そんなこともあろうかと、城塞には30ほど幻術誘導の札を仕掛けてある。」
「30…えげつない。」
「あいつら小賢しいからな。単純に貼っていては全部処理されそうだから、いかにも目立つと
   ころから穴場なところまでこっちで散々シュミレーションしてから準備した。
   そこはぬかりないよなぁ、イズモ、コテツ。」
「…俺たちなりに頑張って見ました。でも、大変だったんですよ、ほんっとに。」
「朝から一日掛りで…なあ。変な滲みが天井にまであるし。なんだか仕掛けがそこらじゅうに
   あるし。昼間でもずんと城内だけ寒いし、暗いし――ひいいい!」
「…そうなんだよな!提灯の光が風もないのに消えたりして…。」
「超、怖かったっす!」
「…お前らがダメダメじゃない。」
「でもって、薮蛇になるかもしれないと思ったんですけど、ちょっと悪ノリしてもう少し過剰に小
   細工してきました。」
「へへへ。油、ペンキ、トリモチなどなど。」
「…おい、それじゃイジメじゃないか。」
「いやあ、ネタ的に面白いかなあと思いまして。嫌でも入浴が必要になるでしょう?」
「そういうのにあの二人がひっかかるわけないじゃない?」
「そうだな。そういう低俗なやつには引っかからないだろう。」
「…つるっぬるっねばっとした感じがエロいからやってみたかったんです!」
「コテツさんの性癖ですね。」
「……最低です。」
「まあ、第一ポイントでは何もなくとも、どのみちなんだかんだと二人は生真面目だからな。
   みっちり報告書は完成させてくるだろう。ああー一石二鳥だね。」
「二人は搾取されすぎなんじゃ。」
「いや、少なくともシカマルにとっては美味しいはずです。」
「それに、テマリは温泉好きと聞いているぞ。きっと満足するだろう。」
「え、温泉なんてメニューも組み込まれているんですか?」
「ああ、まあこれは何も仕掛けはしてないから可能性があるだけの話だがな。」
「見所満載だな、シカマルめ。」
「…では、各々与えられた情報と2者の性格などを考慮してシュミレーションをしてみろ。第一
   ポイントに関しては、本番前の肩慣らしみたいなもんだ。この第一ポイントから夜にかけての
   積み立てがストーリーとして夜のクライマックスにつながるからな。
   もう15時前か…そろそろ廃城に到着する頃合だ。」




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